「経営者目線」を新人に強要するとキケンな理由
よくある自己啓発系やビジネス系の書籍では、 「マネージャーや経営者の目線でメリットを考えて行動できる社員が出来る社員だ」 ということがいわれていると思います。
私もこれについては同意ですが、これをステレオタイプに新人さんにも強要すると、 かえって成長を阻害する要因にすらなってしまうと思っています。
「経営者目線」がやらない言い訳になってしまう
ビジネス上でよくある優先順位づけのコンフリクトとして 「目の前のAをとるべきか、将来のための投資として成長の機会になるBをとるべきか」という命題があると思います。
将来あるべき姿を目指すためにはBという方法をとりたいが、今の現状を乗り切ったり、信頼を勝ち取るためにはAという方法をとったほうがいいような気もする、 というシーンは、経営においてだけではなく、チームや個人にも同様に言えることです。
実際には、すくなくともBの投資をある程度の割合で行なう必要があると思うのですが、 けっこうな割合の新人さんは「Aの緊急性が高く、会社的にやらないわけにはいかないのでAをこなして終わったらBをやろう」と考えてしまうと思います。
その結果、実際に新人さんがBの時間を割けることはほぼないです。
想定外の問題が発生したり、差し込みが発生したりして時間があっというまに食いつぶされて、 気がつけばAを消化しきるのでやっと、ということになるからです。
この新人さんは、今回もそしてこれからも成長の機会をのがし続けることになり、 いっこうに一人前にはなってくれないでしょう。
最悪の場合、こういう新人さんはなんにでも言い訳をするようになります。 「○○ができなかったのは仕事のさせ方が悪い」 「私が成長していないのは仕事の内容が悪かった」 ということをいうようになり、完全に成長が止まってしまいます。
まずは「自分目線」で一番得になると思えることを考えさせよう
こういう場合の新人さんに共通の特性として、 「過剰に自己犠牲的である」ということがあげられます。
朝は早く来て夜は遅くまで仕事をして、 だけど成果が出ないのでどんどん雑務を押し付けられていく。 それでもずっと一生懸命にやり続けるような真面目な人が多いです。
彼らにはまずどうすれば、自分のためになる(評価される、成長する、早く帰れるetc)のか という軸で考えさせましょう。
成長のために投資をするのか、人事評価で早く認められることを重要視するのか(あるいはその両方か)ということを考えさせれば、おのずと今自分の行動をどう選択すべきかということを考えるようになるし、なにより自分自身の選択に責任を持つようになります。
経営者目線を育てるのは、会社の利益と個人の利益を一致させるマネジメントでしかありえない
そんなことをしたら新人が勝手なことばかりして、ちっとも会社の利益にならないじゃないかと考えるかもしれません。
私はそのためのマネジメントだと考えます。
会社の利益と個人の利益を一致させるよう、望ましい行動に報奨を与え、その仕事をすることがどんなインパクトをもたらす仕事であるかを示し、価値観を共通化させるための働きかけをおこなうことこそがマネジメントの本質であると、ドラッカーもカーネギーもいっていたはずです。
そういう意味では極端ですが、「経営者目線で考えろ」とマネージャーがいうのは、ただの職務放棄です。
みんながWin-Winの関係を築ける組織のために、まず部下には自己中心になるように求めてみるのも良いと思いますが、いかがでしょうか