南相馬の関係人口を作りたかったけどどうしたらいいかわからなかったので元同僚たちに助けを求めた話
この記事の要約
- 南相馬市は、いろいろあって地域の課題にかかわってもらえる「関係人口」を求めています。
- 「お試しハウスと体験プログラム」という形で、事業を整えて市役所と民間で動き出しました。
- でも実際にはどうやって関わりをつないでいけば良いかが全然わからなかったので、ターゲットになるだろう元同僚の人たちに相談に乗ってもらうことにしました。
- 相談したらそれ自体が関係人口をつくりだすきっかけになったので、これは良い知見になりそうなので経緯まとめました。
震災から7年たった南相馬市の今
南相馬市では、震災後7年立つものの、人口減少による人材不足や高齢化に悩んでいます。 特に小高区を中心とする旧避難指示区域では住民帰還率が20%程度にとどまっており、課題が噴出しています。
南相馬市ではおおよそ20年先に来るだろうと思われていた人口動態であり、 小高区だけでみれば、先々の予想もしていなかった過疎化が一気に進んでしまった状況。
地域の人達の力だけではこの社会課題を乗り切ることは難しいことから、これまでも外部の復興支援などで多くの協力を頂いていましたが、 まだまだ地域の未来を見通せる状況にはないのが正直な感想です。
小高駅前から撮った写真。この駅前の一等地ですら、帰還率は40%程度なのだ。
一方的な支援から、Win-Winの関係にシフトしたい
一方で課題が個別化していき、命題が「即時的な復旧と支援」から「持続と事業化」に移り変わっていく中で、 徐々に支援という形での協力が難しくなってきています。
しかし、まちを持続化していくためにはこれからの取組みこそが重要であり、これもやはり地域の住民だけでは難しい状況にあります。 そういった状況に、新しい形でかかわりをもってもらう手段として「関係人口」に着目しています。
お試しハウスを中心とした、関係人口施策
これまでも移住促進という形で南相馬とのかかわりを作ってきましたが、どちらかというと雇用拡大等の目的が中心であり、 地域の社会課題に取り組むものではあありませんでした。 しかしながら、地域の社会課題に取り組むことはしばしば事業の段階になっておらず、その不安定な取り組みに関わりながら、移住・生活してくれとはいい辛いし、そこに飛び込める人は極めて少数です。
「移住しないで地域の課題に関わってもらう」ための方法として「関係人口」に着目しました。
僕らのはじめた「Odaka Micro Stand Bar」も、1年半でかなり地域の人に受け入れられるようになってきたがまだ採算ベースには乗り切っていない
関係人口とは?
総務省の定義を借りると
「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる者。 地方圏は、人口減少・高齢化により地域づくりの担い手不足という課題に直面しているところ、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待できる。 としています。大小いろんな関わり方がありますが、何かしらの形で地域や地域の人々と多様に関わる人のことですね。月1できてくれてる人もそうだし、Skypeで相談に乗ってくれる人も関係人口といえます。
南相馬市では「地域の課題にかかわってくれる」関係人口を増大させたいと考えています。
お試しハウスと体験プログラム
そこで、市役所の方で2018年度よりはじめた施策の1つが「お試しハウス」と「体験プログラム」です。
お試しハウスとは、地域の課題に関わってもらう体験プログラムに参加してもらうことを条件に、最大1ヶ月まで無償で宿泊できる民家を提供しますよ、というものです。
外観はこんな感じ。いわゆる普通の民家ですが中はきれいです。
2017年2月ごろより整備がはじまり、モニター宿泊を経て5月より本年度の事業がスタートしています。 弊社「一般社団法人オムスビ」は、ふるさと回帰センターから管理運営部分の業務委託を受ける形でこの事業に関わることにしました。
かかわりを増やす方法がわからないので、相談にのってもらうことにした。
今回の事業をはじめていくにあたって、このような会話のやり取りをしました。
市役所「お試しハウスのハード面は整備できたので、そろそろ体験プログラムもやっていきましょう」
森山「やっていきましょう。それで、体験プログラムってたとえばどういうイメージですか?」
市「正直そこがまだ具体化していないんですよね」
森「そもそも体験プログラムあったところでいきなり来てもらえるイメージもないですしね。東京でイベントやるとか、なにかワンクッションが必要そう」
市「東京で移住イベントみたいなのやってもあまり人が来ないんだよね。前のイベントもほとんど人が来なくて・・・」
森「うーん、課題を解決にかかわるみたいなことがテーマなら、たぶん僕の前職の同僚の人たちが想定ターゲットになってくると思うんです。 どういうイベントなら参加しやすいかとか、そもそも南相馬にどういう関わり方をしてもらえそうかとか、お試しハウスの活用方法とか含めて相談してみる会をひらいてみたらどうでしょうか?まずはそれを最初のとっかかりにして」
市「それやってみましょう」
※決して軽いノリでOKが出たわけではなく、市役所の方々も宮城県の女川町の事例や山元町の事例をヒアリングする中で東京でなにかきっかけになる取り組みが必要だろうということを感じていましたため、こういう話がスムーズにすすみました。
7/6 南相馬とのかかわりを考える会@勉強カフェ池袋
予定をあわせ、7月6日に開催。南相馬から私ふくめて3名、東京の元同僚が3名、杉並区役所で働く職員1名と、職員南相馬市からの派遣職員の2名 の計9名に参加していただきました。
正直、書記に必死になってたのと若干あたまが興奮してたので細かい部分を覚えていないのですが、思い出しながら要点をまとめます。
南相馬市に関わる強い理由
一連の概要や課題感を説明したあとに、「そもそも南相馬市って特産品とか名物ないの?」という話がでてきました。
SWOT分析などをしながら、地域のあるものやチャンスを整理しつつ、話をすすめていく参加者
さすがに「自治体」ともなると、出そうと思えばいくらでも出せるのですが、それで出したからといってすぐ何かがわかるわけではない。。。
どうしようかと思っていたところ、参加者の高橋さんから「なにより南相馬市に関わる強い理由が必要ですよね。たとえば『田舎暮らしがしたい』なんてできるところなんてどこにもある。南相馬じゃないとできないことはなにかってことが大事じゃないか」という話が出ました。
続いて「そういう意味で、南相馬が非常に興味深いと思うのは地域の課題を先取りしている点。この地域で起きることは20年か30年後に日本中の地域で起きること。この地域の課題を解決することが、日本や世界の課題の解決に間違いなくつながっていく。そういう視点をアピールできればよいのではないか」というご意見
説明をしながらろくろを回す高橋さん。高橋さんは最近前職を退職し、今はフリーランスの人事系コンサルタントに。育休男子.jpという活動もしています。
僕も何度か市役所の方にはこういう話をしてきたつもりでしたが、 このような強いメッセージを自治体として発信していくことはなかなか勇気がいるものです。
この言葉を改めて外部の方からきいたことで、市役所の方々からも「そういう見せ方で良いんだ」というような腹落ち感が得られていたように思います。 言葉では言われたけど腹落ちしない、みたいなことってよくあるんですよね。
適切なメッセージを、しっかり発信できているか
見せ方の方向性が見えてきた中で、今度は具体の話に。
元同僚で今はベビーシッターのCtoCサービス「キッズライン」に務める小門さんから
「南相馬ってそういう発信ってやってるんですか?SEOとかちゃんとやるだけで全然違う気がする」
という意見。 ぶっちゃけ超弱いんですよね!「南相馬」で検索したら確かに色々でてくるけど、たぶん思い描いているターゲットは「南相馬」なんて検索しないわけです。
極端な話、「関係人口」とか「地域 かかわりたい」とかそういうキーワードで検索したときに一番上に出てくるくらいにしたいよねという話も。
今回、発信すべきメッセージの方向性はなんとなく見えてきたので、返ったらWEBサイトのメッセージのブラッシュアップとSEO頑張ろうという流れに。
パソコンに目をやる小門氏。話に飽きてネットサーフィンをしていたわけではなく、南相馬のWEBの発信状況について調べていた。できる女子。
また、その中で地域の課題を可視化するのも大事だよね、という話も出てきました。 イメージとして「モンハンのクエストボードみたいなもの」があって、それを地域の内外の人がみて参加したり、集まったり、報酬を受け取るような形も面白いのではというアイデアも。
地域の課題がしっかりインターネット上でわかるだけでもかなりコミュニケーションがとりやすくなりそうだという意見もでました。
まずは足元から
この話に至るまでの流れを作ってくれたのは、おそらくW社時代一番仕事外で付き合いの深かった竹井くん。
会の終盤にWEBの話で盛り上がっているところに、「WEBなどをやっていくのもいいが、まずはこの関係性をしっかりつくっていくことが大事なんじゃないか」と、 しっかり足元をつくっていくべきだと提案してくれました。
開始からほぼ議論の流れをつくってくれた竹井くん。実はスマートニュース社のエンジニアとして働いてるが、お子さんの教育環境を考えて地方への移住も考えてるとか。おいでませ南相馬!
また、「なによりこういう会に参加できること自体が、南相馬にかかわる第一歩。今回も、なにか地域に関われないかと思っていたところにたまたま友人(森山)が南相馬にいて声をかけてくれたから参加できたが、そうでなければ難しい。こういう会自体を定期的にやっても良いのでは?」とも。
そういってもらえるのめちゃくちゃありがてぇよ
正直、今回あまりにふわっとした議題すぎて、開催したもののぐだぐだになったらどうしようとか、ぐだぐだにはならなかったけど参加してくれた人にはあまりメリットがない会になってしまったらとか、すごい心配をしていたのです。
心配になりすぎてせめてモノで満足してもらおうと思って大量のお土産を買い込んだのは内緒
「かかわりたい」とか「今後も継続してほしい」というような意見をもらえたことが、一番の成果だったかもしれません。
冷静に考えたまとめ
自分が結構レアケースだったので忘れがちなのですが「知り合いが誰も関わってないようなところに、関わろうと思う人はあんまりいない」ですよね。そういう意味で関係人口を求めるために、僕の元々の知り合いに助けを求めたのは正解だったように思います。
自分がやっていることはすごく重要で、かつ面白いことでもあると思っているので、まずは見知った相手に共感・巻き込まれてもらえるように引き続きこのような発信やかかわりをもってもらう活動をしっかりしていきたいと思いました。
また、今回の話の流れであまり触れられてなかったのですが、市役所メンバーがすごく良い刺激を感じてくれていたように思います。地域の状況とかデータにずっと向き合っているが故に、外部の発想や考え方を取り入れる機会がすくなくなりがちなのが、公務員の常。「すごい頭を使ったー」といっていました。逆に同僚メンバーは「市役所の人たちが思ってたのと違ってすごく前向きで前のめりだ」ということにすごく好感をもってくれたようでした。
その結果なぞの団結感に包まれて池袋の繁華街のど真ん中で撮影。撮りましょうか?といってくださった通行人に「あえてこの自撮り感がいいんです」と意味不明な発言を繰り返す森山でした
半ば勢いで開催してみた会合ですが、みなさん「圧倒的当事者意識」をもって参加してくださってありがとうございました!
そして二次会へ。このあとも熱い議論が交わされました。皆さんまた付き合ってくださいね